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スペイン人コーチ、ダニエル・コロナ氏が 日本でのクリニックで感じたこと

NBAプレーヤーを数多く輩出し、代表チームも世界屈指の強さを誇るスペイン。エルトラックが海外視察を重ねてきた同国からコーチを招き、クリニックの開催へとこぎ着けた。メインテーマは「ヘルプ」である。ディフェンスではない。「オフェンシブヘルプ」である。

【本文】

★スペインとの相違点

――日本でクリニックを開催した感想を聞かせてください。

「とても興味深い体験でした。私は現在、デンマークで(アンダーカテゴリーの代表チームコーチとして)指導しているのですが、スキルレベルが同じくらいだという印象を持ちました。個人技術は備えているものの、次のステップとして「戦術」を成長させる必要があります。スペースを見たり作ったりする状況判断に目を向けるのです。実はスペインバスケットの強さの秘密はそこにあるんです」

――スペインと違う点をもう少し詳しく教えてください。

「スペインの選手はプレーに『自由』を持っています。自分で選ぶということです。そのあたりに文化の違いを感じました。日本の子供たちの多くは、一つのスペースだけを見ていて他のスペースを見る余裕がないように映りました。実はコーチにとってはプレーを制限するほうが楽なんです。でもプレーを制限してしまうと、選手の才能は伸びないのです。ただ初日のクリニックでボールハンドリングの上手な子が多いと感心しましたし、特に女子選手の中には仲間のために動くインテリジェンス(知性)を感じました。また身長の高い選手でも、コーディネーション(運動能力)に優れていたのが印象に残っています」

――2日目のクリニックは、シューティングから始まりました。どのようなことを伝えましたか?

「両手でシュートを打っている選手が多く、『シュートフォームを変えたほうがいい』と伝えました。両手で同時に打てば正確に決まると日本では考えられているようですが、スペインでは『悪い習慣』です。まだ体力が備わっていない年齢期では、シュートの楽しさを知ってもらうのが最優先なので両手でも良いと思います。でも9歳くらいになったら(片手の)正しいフォームを教えます。9歳というのは一つの目安で、スペインの中でも早いほうです。一方、セルビアなどでは5、6歳から片手のシュートフォームを固めていくようです。それに比べるとスペインはシュートフォームについても、『自由』を好むということかもしれません。体格や文化によってその年齢期は変わると思われますが、『シュートを楽しむ』から『正していく』という発想にする必要はあります」

★オフェンシブヘルプとは

――次に行った「1on1」の練習で伝えたかったことは何ですか?

「次の3つの段階を強調しました。①ドリブルを始める前にフェイクを使ってディフェンスを動かすこと。②1個目のドリブルでディフェンスを動かすこと。そして③チェンジオブペースです。三つ目が一番大事なのですが、まだスキルアップする必要があります。ほとんどの選手のギアチェンジが2段階。3段階できれば良いほうでしたね。私が見た限りでは、4段階以上の選手はいませんでした。スペインではプロ選手は当然のことながら、10代の若い選手も6段階程度のギアを使い分けてチェンジオブペースを意識しています」

――ディフェンスについてはどうですか?

「まずミドルに行かせないように手を使うことです。ボールマンに左手でドリブルさせるならディフェンスは、左手をescudo(エスクード/スペイン語で「盾」という意味)にします。そして右手で方向づけしながら相手をコーナーに追い込みます。比較的そうした手は素早く動かせるのですが、手と足の連動がスムーズではなかったので、スライド(フットワーク)を素早く行える必要があります」

――足の使い方についてスペインは、サッカーが盛んで強い国という影響もありそうですね。

「本当にそう思います。みんな近所でストリートサッカーをやりますからね。そういう意味では小さい頃からいろいろなスポーツをやったほうがいいと言えますね。最後はバスケットボールを選んでほしいですけど(笑)」

――次の2on2では、バックカットでゴールにいったん動いてポストアップすることを強調されていました。

「一度ゴール方向にインサイドフットを入れることでディフェンスがその動きについてきます。そうさせておいてリバースターンを踏みポストアップするプレーが効果的です。今日は紹介しませんでしたが、チェンジオブペースしながらフロントカットしてポストアップする動きと使い分けると良いですね。そして何より伝えたかったのは、アユーダ・オフェンシーバ(ayuda ofensiva/※英語訳だとオフェンシブヘルプ)です」

――3on3でもパスアンドカットを通じて、その点がメインテーマになっていましたね。

「まわりが、ボールマンを助ける動きをするということです。バリエーションは数多くあるのですが、大事なことは型にはめられたパターンではなく自由度が高いということです。それだけにディフェンスにとっては、相手がどこにいるかわからないという状況に陥ります。建物に例えるとスペインでは、個人技術に加えてパスアンドカットの動きが12歳頃から築かれ始め、そのなかで13歳頃までアユーダ・オフェンシーバが積み上げられます。そうすることで14、15歳になってからスクリーンプレーを覚える上での土台がしっかりとできるのです」

――スペインのバスケットボール事情をもっと知りたくなりました。ムーチャス・グラシアス(ありがとうございました)!

●通訳/富田佳宏、谷口悠希

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