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圧倒的なスキルで子供たちを魅了した和製ギャノン・ベイカー大村将基氏

 ギャノン・ベイカーというアメリカのスキルコーチをご存知だろうか?力強いドリブルやハンドリングで全米に名を轟かしているスキルコーチだが、その彼に全く引けを取らない日本人がいる。

その名は大村将基だ。

“和製ギャノン・ベイカー”とも呼ばれる彼が今回のジュニアバスケットボールサミットにはるばる大阪からやってきた。プロバスケットボールbjリーグ大阪エヴェッサのスキルコーチとしても活躍されている彼のクリニックを一目見ようと会場の注目度も高かった。

 しかし、会場の期待以上に大村氏のスキルは圧巻であった。鍛え上げられた身体から繰り広げられるドリブルは思わず「すごい…」とため息交じりの声が出てしまうほどだった。

そのクリニックの内容を紹介していきたいと思う。

1、基本姿勢の確認

・ドリブルスキルといってもいきなりボールを使った練習をする訳ではない。

まずパワーポジションの基本姿勢をチェック。そこから肩と股関節をひねったり、止まった状態から素早く床に手をついたり、ランジなどの動作確認を行った。

これらの身体の連動が、ドリブルの動きに繋がってくる為だ。

2、ドリブル

・基本姿勢を確認したらいよいよドリブル練習に移る。大村氏が強調されていたのは以下の点である。

・全身を使ってパワーポジションを崩さずつく

・顔を上げる

・空いている方の手は、手のひらを広げてボールをガードする

・パウンドドリブルは三頭筋を使う

これらを意識することで子どもたちのドリブルも一気に力強くなっていった。

3、タッチドリブル

 ペアを組んでのドリブル練習。相手の手、フロアをタッチしながらドリブルをつくものだ。ドリブルチェンジで相手を抜く時、自分の進行方向に手を出すことによってボールをディフェンスから守ることができる。そのことを意識してクロスオーバーや、レッグスルー、バックビハインドなど高度な技術にチャレンジする子もいた。

 この練習で、大村氏は“TEAM”という言葉をキーワードにされていた。ドリブルは1人で練習しているだけでは上手くならない。実際、試合中にはディフェンスに守られながらドリブルをつくことがほとんどだ。ペアと呼吸を合わせたり、声やコミュニケーションをとることはより実践的な練習に繋がる。この声かけによって練習の雰囲気も明るくよりポジティブな空気が流れていた。

4、2ボールドリブル&テニスボールキャッチ

 ボールを2つにして先ほどのノーマルドリブルや縦、横のドリブルを組み合わせて行う。この2ボールドリブルのデモンストレーションは圧巻でドリブルのパワーとスピードが凄まじく、クリニックに参加している子は目が釘付けであった。

 テニスボールキャッチはドリブルをついた状態で、ペアの人がテニスボールを左右2つ持ち落ちた方をキャッチするシンプルなものだ。キャッチに合わせてスピードを落とさないように沈みながらとることが理想である。

5、ラダードリブル

 ラダーをしながらドリブルをつく、カップリング能力を養いながらドリブル時のフットワークを身につける練習である。今回のクリニックで行われたのは以下のものである。

・ジャブステップ

・インサイドアウト

・ドリブルチェンジ~ステップ

・ハーキーステップ

・2in2out(2歩足を入れて、2歩出す)

・ケンパー(足を閉じて、開く)

 ラダーにより動きが自動化され、技を使うときには子供たちが華麗なフットワークで補助コーチのDFを鮮やかにかわしてシュートを決めていた。ここでのポイントはDFより先にアクションを起こして揺さぶりをかけることである。

6、ウィングでのもらい足

 クリニック終盤はウイング(45度)の位置でもらってからのドライブを行った。基本的にはDFに対して身体の横を向けた状態でボールをもらい、インサイドフットを中心にDFの状況に応じて使い分けるものだ。

・DFがミドルライン側にいる場合…スイープ

 ボールをひざ下に通し(この動きをスイープと言う)、そのままリバースターンをして一気に抜き去る。この時軸足が動いてしまうとトラベリングになるので、ドリブルを先につくことを心掛ける。

・DFがスイープに反応してきたら…オープンジャブステップ

 DFに一度守られても、そこからジャブステップをフェイクにしてミドル側にクロスステップでドライブする。

・ジャブステップに対して無反応…バディシフト

 DFが反応してこなかった場合はそのままドライブをする。バディシフトと呼ばれる技術である。

・DFがベースライン側にいる場合…フロントターン

 ミドルライン側にアウトサイドフットを出して一気に抜き去る。これにDFが反応してきた場合はスイープの流れと同様に、ジャブステップ等を使い分ける。

 これらの練習では大村氏が実際にダミーDFに入って、間違っているところを修正しているのが印象的であった。子どもたちも最初は何となく得意なドライブをしていたが、最後のころにはDFの状況を見て技を使い分けていた。

○まとめ

 クリニック全体を通してとてもポジティブな空気を感じた。これは大村氏がデモンストレーションのなかで、楽しみながらチャレンジしていることを体現しているからであろう。

 クリニックの補助に入っていただいた、アメリカのプロ選手や通訳の方々も、「いいね!!」、「Good!!」という声掛けをされていて、見ているこちらも思わずドリブルをしたくなる練習だった。

 充実したクリニックの最後に大村氏から子どもたちにメッセージが贈られた。“Slow is Good”という言葉だ。これは2014年のNBAファイナルでMVPをとった、クワイ・レナード選手の言葉である。

 レナード選手はNBA入団当時、シュート確率が悪く非常に苦労したが、年を重ねるごとに精度が上がり、ついにはNBAファイナルでMVPをとるまでに成長した。その彼が大事にしていたことが、「どんなに遅くても、自分を信じてやれば必ず良くなる」ということだ。

 大村氏自身も、ドリブルやスキルのトレーニングを毎日毎日積み重ねたからこそ今の技術がある。そんな大村氏の魂のクリニックを受けてチャレンジしていく子どもたちの姿を見ていると、日本のバスケットボールの将来に希望を持たずにはいられない。(池田 親平)


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