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GANBAX BS塾長 小鷹勝義氏の「世界と戦うためのドリブルチェンジ」

 女子日本代表がアジアでチャンピオンになり、リオデジャネイロ五輪出場を決めた。 その司令塔でありチームのキャプテンも務めたのが吉田亜沙美選手だ。その吉田選手の出身ミニバスは千葉県市川市にある「中山MBC」である。現在、ユニバーシアード女子日本代表のポイントガードを務める藤岡麻菜美選手(筑波大学4年)も中山MBC出身だ。そのほか、東京成徳大高等学校で活躍した金子美由紀選手など、名だたる名ガードを育ててきた中山MBC、その名門チームを率いてきたのが小鷹勝義氏である。その理論的な技術論のみならず、子ども達にもわかりやすい指導方法に定評があり、多くの選手達、保護者達から支持され続けている。現在はGANBAX BSというバスケスクールの塾長も務め、全国各地を精力的にまわり、ジュニア期の育成を進めている。その小鷹氏がこだわってきた技術のひとつが「ドリブル」だ。今回のクリニックで披露されたそのドリブル指導のポイントを皆さんにもご紹介したい。

――指導のねらい、目的をお聞かせください。

「世界と戦うためのドリブルチェンジを身につけることが目的です。また、状況判断、考える力を養うことも大事にしてクリニックを行いました。」

――クリニック担当しての感想をお聞かせください。

「鈴木代表のお誘いにより楽しく参加させていただきました。今回のサミットでスクールコーチの育成に繋がったり、たくさんの人が集まってそれぞれが良いものを出すことによってみんなが勉強できればいいなと思います。」

――ジュニアバスケットボールサミットについてはどういった感想をお持ちですか。

「トーステン氏のマンツーマンディフェンスのクリニックもそうですし、日本のバスケットのためにも協会のトップクラスがこのような環境を理解することで、ジュニアの育成・ミニバスへの展開へと発展していってほしいです。鈴木代表もおそらく「バスケ馬鹿」だと思いますが、私もかなりのバスケ馬鹿なので、またこのような機会があれば是非協力していきたいです。」

――最後に指導理念をお聞かせください。

「バスケットが大好きな子を育てたいので、とにかく無理はさせません。基本的に走るトレーニングは行わず、練習の中では、身体の使い方を多く取り入れています。正しい姿勢が身につくし、なにより怪我をしないでバスケットを続けて欲しいのでそういったことを大事にしています。」

「そのほかにも大事にしているのは、選手との関係作りです。選手とのやり取りは頻繁にします。WJBLの吉田亜沙美選手とは今でも連絡を取り合っていて、8〜9月に行われたアジア選手権の結果報告の連絡を貰ったり、お互いに励まし合っています。ですが、1番の関係作りの起点となっているのは父兄の皆さんの協力が大きいです。父兄の方ともよく食事をしたりします。監督・保護者・選手が三位一体となって活動していくことが大事ですね。」

 今回は17時から19時までの2時間の練習だったが、そのうち約1時間がドリブル練習、後の1時間でだいたい30分ずつ1対1と3対3を行った。1時間もリングを使わない基礎的なドリブルチェンジの練習をしたのにも関わらず、選手の集中力は切れることはなく、なおかつ楽しそうに取り組んでいた。

小鷹コーチは今回のクリニックの最初にこうおっしゃっていた。

「今からドリブルとハーフコートでの3対3の練習をします。では、なぜこの練習をするのか?なぜ必要なのか?そういったハテナを考えながら、そしてイメージしながら練習していきましょう。」

 ただ選手に今回のクリニックに参加していってもらうだけでなく、選手達が自分自身も常に考えながら練習することによって、より成長の可能性を引き出すような雰囲気作りをしていた。

 ドリブルやディフェンスなどの基礎的な練習は特に単調になりやすく、子ども達にとっても長時間集中力をもって取り組むのはなかなか難しいかもしれない。だが、練習のどこに重点を置くか、何を感じてほしいのか、伝え方や工夫次第で、選手が集中力をもって楽しめる練習作りはいくらで作り出せる。選手が成長する可能性が無限にある限り、その成長を手助けする指導者の可能性も色んなところから得ることができ、そして体現出来ると、今回の小鷹コーチのクリニックで改めて感じることが出来た。(沼田 菜摘)

練習内容

◾︎ドリブル練習

1)姿勢を落とし、歩行のペースで交互のツーボールドリブル

→半分まで進んだら同じ姿勢のままバックで下がる

→スタートの位置まで戻ってきたら、そのままチェンジオブペース一往復

▷ポイント

 ツーボールドリブルの練習で小鷹コーチがおっしゃっていたことは、まずドリブルの基本である「強く・低く・前を見る」ということが大前提にあり、そしてツーボールドリブルは特に、肘を身体の近くに寄せること、そしてこの後のドリブル練習でも何度も確認していた、ドリブル中の姿勢のところは細かくチェックしていた。

姿勢に関してはガチッと膝を曲げすぎると逆に動きにくいのでフラットなスタンスで自分が動きやすい程度に膝を曲げるようにと教えていた。

2) スピードドリブル一往復

半分の地点で

①スキップステップ

②スキップステップからフロントチェンジ

③リトリートからフロントチェンジ

をそれぞれ一往復につき2回行う

▷ポイント

フロントチェンジは大きくコースを変え、ディフェンスを一気に振り切るイメージで行う。

3)分解練習(2のドリブル練習の際にフロントチェンジの個人差があったため、改めてポイントなどを強く強調して分解練習)

①歩きながらスウィングドリブル

 歩行のスピードでフロントチェンジをしながら進んでいく。

▷ポイント

 ここでのフロントチェンジはディフェンスとのズレをつくるための大きなチェンジをしたので、とにかく「強く・大きく」、ドリブルは高すぎないようにし、「肩の高さまで」が目安に行う。

②2人組で向き合い、その場でフロントチェンジ連続50回

 フロントチェンジをした際にボールが離れた方の手で、

→ハイタッチ(繰り返す)

→チェンジをしたら床をタッチする。

▷ポイント

前をみながらドリブルをつくという意識付けのためにお互いの顔を見ながら行う。

4)進行方向に対してななめにドリブル

→スピードの中で3回フロントチェンジを入れる

▷ポイント

 この練習で意識すべきことは、フロントチェンジがスピードの一連の流れでダラーっとならないように、チェンジの際は必ずスピードをコントロールし、急ストップして切り返すようにする。実践をイメージし、1対1でDFを急ストップにより振り切り、DFがズレた瞬間チェンジをするというイメージである。DFはスタンス的にも、特にスピードのついた状態から急ストップすることは難しいのでOFのスピードドリブルからの急ストップはズレをつくるためにもかなり有利である。

小鷹コーチはクリニック中にも度々、ストップは「急ストップ」で止まること、そして正しいストップが出来ることは基本であり、大事なことだと強調されていた。

5)スピードドリブルからビッグフロントチェンジ(縦)

フロントチェンジを正面に対して横ではなく、ボールを後ろへ下げながら、後ろ足を引き、縦方向にチェンジをする。

▷ポイント

 チェンジの際に足を素早くクロスし、次の進行方向へ向けること、また、チェンジをする(後ろ足を引く)時にDFに対して背中を向けることがポイントである。大きなチェンジで、目安としてはフリースローサークルの半円を端から端まで移動するくらいチェンジ後の移動の幅は広くする。

このフロントチェンジを小鷹コーチは最初に「日本人が海外で戦うために必要なスキル」であるとおっしゃっていて、まさに今回のクリニックのテーマでもある「世界と戦うためのドリブルチェンジ」であるということだった。

 理由としては、実際にユニバーシアードで海外の選手と戦った小鷹コーチの教え子である中山MBC出身、現筑波大学女子バスケットボール部の藤岡麻菜美選手もこの縦の変化によるチェンジで海外の選手を打破したこと、そして日本が世界に勝てる武器として、クイックネスの速さがあり、それに伴うドリブルスキル、チェンジに海外の選手がついていけないという日本人の強みを活かしたスキルということである。

6)ビッグチェンジ→スモールチェンジ→繰り返す

②の練習と同様に縦方向にチェンジした瞬間にもう一度後ろから前へスモールチェンジをする。スモールチェンジは小さく、クイックで行う。

▷ポイント

 ではなぜ、「ビッグ」から「スモール」なのか、その例えとして小鷹コーチは、選手たちにイメージしやすく「パンケーキ」を挙げていた。パンケーキはただ焼いて食べても美味しくない、その生地にトッピングや飾りを加えることでより美味しくなる。=「デコレーション」をする、つまりドリブルも同様にビッグチェンジからスモールチェンジへ大きさや速さなどリズムの変化を加えることで「デコレーション」となり、相手を破るドリブルへと繋がる。

 練習ではビッグとスモールの違いを意識させるため、それぞれのリズムの音を感じ、そして周りの人にその音の違いが伝わるようにドリブルをつくことがポイントである。

◾︎7)1対1(ディフェンス練習)

① “クロスラン”(ラン&グライド)

 まずはオフェンスがボールを持った状態でジグザクに進むのでそれに対してディフェンスはついていくというシンプルなメニュー。オフェンスはスピードでジグザクに進むので、スライドから(間に合わないことを想定し)走って追いついたらまたスライドに戻す、という基本的な練習である。

▷ポイント

 ランで追いついているのになぜまたスライドに戻すのか?それは、ラン=足がクロスした状態はどちらかに重心が傾いた状態なので左右の振りに弱いが、スライドだと重心が中心に戻るのでどちらに振られても反応できる、そこまで小鷹コーチは選手達に説明していた。そして、コースに入り、止めた後は次の動きを予測する。予測は左右どちらにいくか、だけでなく自分の位置や止めた場所などを感じ、“どちらに何%ぐらいの確率でいくだろう” そこまで考えるようにと指導していた。

②ドリブルありのコースチェック

③1対1

 1対1はコートを半分に分け左右にわかれて行う。シュートなしで20秒間ひたすらオフェンスは抜きにかかり、ディフェンスは守り続ける。シュート無しなのでリングはあまり意識せずとにかくその空間で相手と1対1し続けるというような練習であった。

▷ポイント

 左右交互に行なうため、逆側の様子を確認したり、1対1の練習でも常に周りを意識し状況判断をしながら行うようにと選手に伝えていて、そう選手に意識させることで左右同時進行の練習でも逆側の選手とぶつかってしまうなどの安全面でのリスクも自然と減り、なおかつ左右展開で運動量も確保できる練習となっていた。

◾8)ハーフコートの3対3

 ボール2個で、OFはパス&ランがルール。ボールを保持している時は特にドリブルの制限はなく、ドリブルしながら移動も有り。ただしドリブルの数が多くなるということはオフボールの選手の動きが連動出来ていない可能性があるので、なるべくドリブルは少なく、パスをスムーズに回すことを考える。

▷ポイント

 まずボールを受ける際は必ずキャッチボイスを出すこと。キャッチボイスを出す意味としては、声を出すことにより力が湧き、キャッチが強くできミスが減る。味方に位置を知らせることも出来る。

OFのポイントはパスを出しながら走り、DFよりも一歩先を先行することで、動くときはゴール・味方・ボールの位置を把握することを意識する。そして自分の普段のポジションを頭に入れ、例えばセンターだったら、シューターだったら、どの位置でもらうことが多いか、どこで貰えば次のプレーに繋がるのかをイメージしながら練習する。

 例えばガードがトップからゴールに切れるのは、まず第一優先としてシュートを狙い、切れたことによりその後スペースをつくるというように、それぞれのポジションがそれぞれの動きの中に全て意味がある。


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